COVID-19感染症の予防とその影響との闘いのための2020年5月15日法律第55号(当館仮訳)

令和2年5月18日
COVID-19感染症の予防とその影響との闘いのための
2020年5月15日法律第55号
 
(以下の中の「注」は、在ルーマニア日本国大使館による注。)
 
(前文:略)
 
【一般条項】
第1条
この法律の目的は,警戒事態期間中にCOVID-19感染症の予防・対策のための一時的で段階的な措置を講ずることによって人命と健康に関する権利を守ることであり,このために他の権利と自由を制約することも含む。
 
第2条
「警戒事態」とは,広範囲の非常に強いリスクへの対応で,一時的な性質の措置が組み合わされる。これらの措置は,予見される重大性のレベルに従って,生命,健康,環境,物質的・文化的に重要な財産や所有物に対する差し迫った脅威を予防するためのものである。
 
第3条
警戒事態は,リスク要因に関する分析が緊急の事態に対応する必要性を示しているときに、市町村,県,全国のレベルで宣言することができる。
期間は、30日間を越えて宣言することはできない。必要があれば何回でも延長できるが,30日間を越えて延長することはできない。期限内に終了することもできる。
これらのために、以下のリスク要因を分析する。(略)
 
第4条
(1)警戒事態は,内務大臣による提案を受けた政府決定により導入され,30日間を越えて導入されることはできない。確固たる理由があれば,最大30日間,内務大臣による提案を受けた政府決定により延長できる。(注:第3条と重複があるが、規定のまま。)
(2)警戒事態は,国土全体に又は場合により一定の行政地域だけに、導入できる。
(3)警戒事態は,国土全体の半分以上に導入される場合には,議会による承認を要する。議会の上下両院合同会議は,承認の要請を受けてから五日間以内に承認を行う。議会が承認を拒否する場合には,警戒事態は直ちに終了する。
(4)議会は,政府案を、そのままで又は修正を付して、承認できる。
(5)(6)行政機関が発行した文書の効力は,警戒事態の期間中及び期間終了後90日間、維持される。
運転免許証が当局預かりとなった場合に交付される仮運転免許証のみは、その効力が、警戒事態の期間中及び期間終了後10日間、維持される。
 
【分野別条項】
 
(経済分野)
第5条
(1)警戒事態への対応能力を高めるための各種措置は、次のとおり。
a)随意契約による物品や役務の購入
b)影響を受けた地域への技術,設備,機材等の再配分
c)影響を受けた地域への,本人の同意を得た上での必要な人材の派遣
d)公共サービスの機能の調整
e)社会保障サービスの勤務時間の調整又は常設化
f)一時的な活動をする緊急センターの活動の常設化
(2)共同体の強靱性(レジリエンス)の維持のための措置
a)影響を受けた又は受けそうな地域からの,人や物品の一時的な退避
b)影響を受けた人や動物への初期支援
c)緊急の事態の影響を停止又は抑制するための環境やインフラの緊急工事
d)(施設)隔離や自主隔離措置を含む,健康へのリスクを抑制するための人命を守る保護措置
(3)リスク削減のための措置
a)屋外における集会,デモ行動,行進,コンサート,その他の集まり,屋内における文化,科学,芸術,宗教,スポーツ,その他の娯楽のための集まりの抑制又は禁止
b)人や車両の交通の,場合により一定の時間についての,抑制又は禁止
c)場合により一定の時間についての,一定の地域からの外出の禁止,又は,一定の建物,市町村,地域の封鎖
d)道路,鉄道,海運,河川,航空,地下鉄交通の,場合により一定の時間についての,抑制又は禁止
e)国境地点の一時的な閉鎖
f)一定の機関や企業の一定の期間の活動の抑制又は停止
g)市民や企業の,地域の利益の活動のための参加
 
第6条
(警戒事態を宣言又は延長する決定や,警戒事態期間中にとられる措置につき、法的根拠、期間及び実施所管当局の指定を規定。)
 
第7条
警戒事態期間に適用される措置は,緊急事態が導入された場合には,見直しが行われる。
 
第8条
(1)警戒事態期間中は,レストラン,ホテル,モーテル,ペンション,カフェ、その他の公共の場所における,屋内及び屋外テラスでの共同スペースにおける飲食物の提供が停止され得る。
(2)警戒事態期間中,上記(1)の場所で消費されない飲食物の準備及び販売は、許可され得る。なお,衛生的予防措置を講じたテラスは、除く(注:衛生的予防措置を講じたテラスであれば、その場で消費される販売も許可され得る、の意。)。
 
第9条
警戒事態期間中は,国家特別緊急委員会の合意により,ショッピング・モール等の営業が停止され得る。
例外は,以下のとおり。
敷地面積15,000平方メートル未満で個々の商店の面積が500平方メートル未満のもの
配達が確実な家電製品の販売
ショッピング・モールの外部から直接入場でき,かつショッピング・モールの内部との通行が遮断される店舗
食料品店,薬局,歯科医院,クリーニング店,理髪・美容院,眼鏡店。
これらの店舗の従業員は、マスクを着用し,少なくとも四時間毎にマスクを交換する。店舗は、従業員にマスクを提供し,店内への入り口に消毒液を備える。客は,マスクの着用及びレジにおける距離の規則の遵守が義務づけられる。
 
(保健分野)
第10条
警戒事態期間中,保健省は,場合により,医療施設におけるCOVID-19感染症との闘いのための活動の調整を行う。
 
第11条,第12条
(警戒事態期間中の,保健省による人事採用に関して規定。)
 
第13条
警戒事態期間中は,保健大臣及び内務大臣の共同指令により,次の措置をとることができる。
屋内公共スペース,商業施設,公共交通機関、職場でマスクを着用する義務。
公共機関及び全ての企業が,入り口で従業員及び来訪者の確認・選別(トリアージュ)を行い,かつ手の消毒をさせる義務。トリアージュは,従業員については非接触型の体温計による体温測定,来訪者については体温測定を行うことにより、実施する。
 
第14条
警戒事態期間中は,警戒事態の原因を解決するための物品の市場における確保に問題がある場合に限り,これらの物品の価格の上限を定めることができる。
 
第15条
警戒事態期間中は、医療サービスの供給者の活動の再開についての規定は,保健大臣の指令で定められる。
 
(労働・社会保障分野)
第16条
(警戒事態期間中のCOVID-19感染症関係分野の公共機関の従業者の他の職場への派遣の可能性について規定。)
 
第17条
警戒事態期間中,雇用者は,被雇用者の同意を得て,テレワークか在宅勤務,勤務場所や担当の変更を指示できる。
 
第18条
(警戒事態期間中のCOVID-19感染症関連業務に従事する被雇用者の休暇について規定。)
 
第19条
(高齢者や身体障害者センターの活動の維持について規定。)
 
第20条
警戒事態の期間中及び期間終了後90日間は、集団労働契約の期限は延長される。この場合,警戒事態期間終了後45日以内に,契約の更新についての労使交渉を開始しなければならない。
 
第21条
警戒事態期間中は,50人を越える従業員を擁する雇用者は,被雇用者の同意の有無によらず,従業員同士の出退勤時刻が一時間ずつ最大三時間ずれるように,勤務時間を変更することができる。
 
第22条
(警戒事態期間中の公務員の専門外の業務実施について規定。)
 
第23条
(警戒事態期間中にとられる,政府による、その被雇用者及びその家族に対する特別支援措置について規定。)
 
第24条
(社会保障分野に関する緊急政令2020年第30号の効力の継続について規定。)
 
第25条~第27条
(警戒事態期間中の公務員の勤務について規定(第25条:超過勤務、第26条:職務遂行上の過ち、第27条:採用))
 
第28条
警戒事態期間中,一定の分野の職務については,学校が休校中の子供の監督のために親が休暇を取得できる法律が,学年終了まで適用される。
 
第29条
警戒事態期間中は,エネルギー,原子力,火を消せない(常時の稼働が必要な)事業所,医療機関,社会保護施設,通信・国営ラジオ,国営テレビ,鉄道,公共交通,ゴミ収集,ガス,電気,暖房,水道分野では、集団労働争議が禁止される。
 
第30条
(警戒事態期間中の、医療機関,社会保護施設,国防,治安維持,国家安全保障分野の労働者の辞職手続きの禁止、及び右手続きが開始していた場合の停止について、規定。)
 
第31条
警戒事態期間中に外国で勤務することになるルーマニア人被雇用者については,関係当局が特別な保護措置を命令することができる。
 
(運輸・インフラ分野)
第32条
新型コロナウィルス対策のため,地上,地下,航空,船舶による運輸に関し,この法律の条件に従い規制や措置が導入される。これらの分野及び通信分野における具体的な措置は,国家特別緊急事態委員会(CNSSU)の提言に従い,内務大臣が命令する。運輸に関するCNSSUの提案する措置は,運輸インフラ通信大臣が許可する。
 
第33条~第36条
(航空,鉄道,陸上運輸,船舶の分野において,それぞれの関係省庁が,消毒、機材,手続き,乗客の扱い等の様々な制限措置をとることができることを、規定。)
 
第37条
運輸インフラ通信省は,国家特別緊急事態委員会の決定によるEU加盟国やその他の国等の関係当局との合意に基づき,国内及び国際的な貨物旅客分野及び通信分野の措置をとる。
 
(教育・研究分野)
第38条
警戒事態期間中は,CNSSUの提言による教育研究大臣及び保健大臣の共同指令により,幼児,生徒,学生の登校を停止できる。登校停止の期間は,警戒事態期間を超えることができる。
 
第39条
(オンライン教育の導入及びパソコンのない生徒への支援を規定。)
 
第40条
(大学教育に関して規定。)
 
第41条
教育研究大臣及び保健大臣は,現行学年(アカデミック・イヤー)の終了及び次学年の開始が衛生安全措置を講じて行われるように、合同指令により措置する。
 
第42条
(小中高等学校で、生徒の物理的な存在が必須な活動については、教育研究大臣及び保健大臣の共同指令で定めること,そのために必要なマスクを教育研究省が提供すること等を、規定。)
 
(青年・スポーツ分野)
第43条
警戒事態期間中のスポーツ活動(トレーニング,練習,キャンプ,スポーツ競技)についての制約は,青年・スポーツ大臣及び保健大臣の合同指令により規定される。
 
(文化・宗教分野)
第44条
警戒事態期間中は,博物館,図書館,書店,映画館,映画スタジオ,コンサートホール,文化機関の活動や,屋外における文化行事、フェスティバル等は,文化大臣及び保健大臣の共同指令により決定された予防措置と規則に従って実施され得る
予防措置が遵守されない場合には,これらの活動は,一定の期間CNSSUにより停止され得る。
 
第45条
宗教活動は,CNSSUの提案に基づく保健大臣及び内務大臣の共同指令による規則を遵守の上で、任意に行われる。
 
(会社の倒産に関する措置)
第46条~第52条 (略)
 
(刑罰の執行分野)
第53条~第63条 (略)
 
【責任と処罰】
第64条
この法律に違反した場合には,民事,罰金,刑事罰の責任が問われる。
 
第65条
警戒事態期間中の以下の行為には,刑法上の処罰の対象となると看做されない限りにおいて,罰金が科される。
a)第5条(1)e)(社会保障サービスの勤務時間の調整又は常設化)の不履行
b)第5条(1)f)(一時的な活動をする救急センターの活動の常設化)の不履行
c)第5条(2)a)(影響を受けた又は受けそうな地域からの,人や物品の一時的な退避)の不履行
d)第5条(2)a) (影響を受けた又は受けそうな地域からの,人や物品の一時的な退避)の執行妨害
e)第5条(2)b)(影響を受けた人や動物への初期支援)の執行妨害
f)第5条(2)c)(緊急の事態の影響を停止又は抑制するための環境やインフラの緊急工事)の不履行
g)第5条(2)c)(緊急の事態の影響を停止又は抑制するための環境やインフラの緊急工事)の執行妨害
h)第5条(2)d)((施設)隔離や自主隔離措置を含む,健康へのリスクを抑制するための人命を守る保護措置)の、個人による不履行
i)個人による、第5条(2)d)に従った自主隔離の不履行
j)第5条(3)a)(屋外における集会,デモ行動,行進,コンサート,その他の集まり,屋内における文化,科学,芸術,宗教,スポーツ,その他の娯楽のための集まりの抑制又は禁止)の違反
k)個人による、上記の集まりへの参加
l)上記の集まりの主催 (注:上記j)との法的な差違は不明。)
m)第5条(3)b)に規定する交通規制への違反
n)第5条(3)c)に規定する外出規制への違反
o)第5条(3)c)に規定する封鎖措置への違反
p)第5条(3)d)(道路,鉄道,海運,河川,航空,地下鉄交通の,場合により一定の時間についての,抑制又は禁止)の違反
q)第5条(3)f)(一定の機関や企業の一定の期間の活動の抑止又は停止)の違反
r)第5条(3)f)(一定の機関や企業の一定の期間の活動の抑止又は停止)の違反で,活動の停止への違反
(注:s)以下の規定もあるが、条文中で引用されている条項が存在しない。)
 
●第66条 (第65条に規定される違反等への罰金額)
a)罰金額500~2,500レイ
・第65条c)(影響を受けた又は受けそうな地域からの,人や物品の一時的な退避の、不履行)
・第65条d)(影響を受けた又は受けそうな地域からの,人や物品の一時的な退避の、執行妨害)
・第65条e)(影響を受けた人や動物への初期支援の執行妨害)
・第65条g)(緊急の事態の影響を停止又は抑制するための環境やインフラの緊急工事の執行妨害)
・第65条h)(施設隔離や自主隔離措置を含む,健康へのリスクを抑制するための人命を守る保護措置の、個人による不履行)
・第65条k)(各種集まりへの個人による参加)
・第65条m)(交通規制への違反)
・第65条n)(外出規制への違反)
b)罰金額1,000~5,000レイ
・第65条a)(社会保障サービスの勤務時間の調整又は常設化の不履行)
・第65条b)(一時的な活動をする救急センターの活動の常設化の不履行)
・第65条f)(緊急の事態の影響を停止又は抑制するための環境やインフラの緊急工事の不履行)
・第65条i)(個人による,自主隔離の不履行)
・第65条o)(封鎖措置への違反)
・第65条q)(一定の機関や企業の一定の期間の活動の抑制又は停止への違反)
c)罰金額2,000~10,000レイ
・第65条l)(各種集まりの主催)
・第65条r)(一定の機関や企業の一定の期間の活動の停止への違反)
・第65条t)(注:かかる条項は存在しない。)
d)罰金額3,000~15,000レイ
・第65条j)(各種集まりの抑制又は禁止への違反)
・第65条p)(道路,鉄道,海運,河川,航空,地下鉄交通の,場合により一定の時間についての,抑制又は禁止への違反)
 
第67条 (第65条及び第66条の担当省庁を規定。)
 
第68条
この法律に定められている違反には,違反に関する一般的な枠組みである政令2001年第2号が適用される。
 
第69条
罰金は、15日間以内に支払う場合には、半額に減免される。また、罰金は全額国庫に編入される。
 
第70条
第66条は,この法律が官報に掲載されてから三日後に効力を発生する。
 
【最終条項】
第71条
この法律が定める措置の実施のために,政府は,関係省庁又はCNSSUの提案に基づき政府決定を承認する。この法律の措置の適用のために,関係省庁は,CNSSUの提案により指令を発出する。
 
第72条
この法律の内容に反しない限り、他の関係法令も適用される。          
(了)