大使レター(1)
令和6年7月12日
皆さん、こんにちは。
私はこのたび在ルーマニア大使として着任しました片江学巳(かたえ・たかし)でございます。このお便りで初めてご挨拶させていただく方も多いとは思いますが、皆様と日ルーマニア関係のために一緒にお仕事をさせていただくことを楽しみにしておりますので、改めまして宜しくお願いします。
私はブカレストでの勤務は初めてですが、ルーマニアは日本とは法の支配や民主主義等の基本的価値を共有するパートナーであり、また、EUやNATOの加盟国として域内での存在感も高めつつある国と伺っています。また、コロナ禍やロシアのウクライナ侵略など国際情勢が厳しい中にあっても経済が二年連続で約5%成長するという元気のいい国で、すでに自動車産業のサプライヤーやIT関連など110社以上の日系企業が進出しておりますが、近年さらに注目を浴びています。私はこうしたルーマニアとの関係の今後には大きな期待を寄せております。
日本とルーマニアは、近年その関係を深化させております。2021年には外交関係樹立100周年という節目の年を迎え、2023年3月のヨハニス大統領による訪日の際、岸田総理との間で署名された「戦略的パートナーシップ構築に関する日・ルーマニア共同声明」により、両国の関係は「戦略的パートナー」に格上げされました。これからはこの首脳間で一致した各分野での課題を一つ一つ具体的に実行に移していく段階です。在ルーマニア日本国大使館としては、着実にこれらを実行に移せるよう環境整備に努めていきたいと考えております。こうした取り組みを通じ、そして今年は日ルーマニア外交関係再開65周年の節目の年でもあるので、これを契機にルーマニアと日本の共通利益の拡大、人と人との相互理解の増進、様々な分野での交流の促進に向けて全力を尽くしていきたいと思います。
私は1月22日にヨハニス大統領に信任状を捧呈し、大使としての活動を開始して以降、まずはチウカ上院議長、チョラク首相、内務、司法、国防、経済・起業・観光、エネルギーを担当する諸大臣にご挨拶をし、戦略的パートナーとしての関係拡大深化を進めていくことで一致し、具体的な案件についても話し合いを進めました。今後もこうした話し合いをルーマニア政府要路と進めていきたいと思います。2月23日で64歳となられた天皇陛下の誕生日を祝賀するレセプションも開催し、チウカ上院議長やトゥルカン文化大臣、ブルドジャ・エネルギー大臣などのご出席を得て盛大に開催するとともに、私から大使館としての日ルーマニア関係拡大・深化へのコミットメントを表明いたしました。
政府間の関係のみならず、2023年はこうした日本とルーマニアの関係を象徴するような目に見える成果もいくつか見られました。その一つはドナウ川にかかるルーマニア国内最長、EUでも三番目の長さを誇る吊り橋「ブライラ橋」の開通であり、着任後早速訪問しましたが、その威容に圧倒されました。同橋は日系企業が有するハイレベルの橋梁技術を用いた一大プロジェクトであり、文字通り日本とルーマニアが手を携えて協力していく「架け橋」でありました。EU基金を活用したプロジェクトという意味で日EU協力の象徴でもあり、ウクライナ・モルドバ等との地域の連結性を向上させる意義もあります。今後もこうした形で日系企業がルーマニア経済に貢献できるようなWin-Winの経済関係を後押ししていきたいと思っております。特に、昨年着工した「ブカレスト国際空港アクセス鉄道建設計画」も将来両国の象徴的なプロジェクトとなると認識しています。
市民レベルでの交流についても、更に拡大する空間が大きいと考えます。私どもとしては双方の交流のスコープを更に広げ、多面的な交流拡大に努めていきたいと考えています。ルーマニアには多くの魅力的な観光資源があるにも関わらず、必ずしも日本でよく知られていないように感じております。私は2月下旬にはシビウを、3月上旬にはヤシをそれぞれ訪問し、各地域の個性をもった、歴史を感じさせる美しい街並みや建物に感動いたしました。今後とも自らルーマニア国内の各地を訪問しこの目で見て、ルーマニアの魅力を日本に伝え、多くの方々に訪問してもらうよう尽力したいと考えています。こうした人と人の交流促進は相互理解を更に進め、更なる交流を生むであろうと確信するからです。
ルーマニアの方々の日本への関心については、近年、特に文化的な面で高まってきているようです。日本語学習者も東欧諸国の中では2 番目に多いと聞いており、茶道や武道などの伝統文化、そしてアニメ・マンガといったポップカルチャーの熱心なファンがいます。これを奨励し、更に対日関心を高めるようファンの力も借りながら幅広く日本の文化を紹介していくように努めていきます。ルーマニアでは音楽や演劇に関する国際的なイベントを例年開催されており、これがそれらの分野でのアーティストや芸術を愛する市民間の交流にもつながっております。
国際社会ではポスト冷戦期が終焉し、三年目にも突入したロシアのウクライナ侵攻などにより、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序がこれまでにないあからさまな挑戦を受けており、また、人間の尊厳が脅かされる事態となっております。1月の着任早々私はガラツィで日本のNGOがウクライナ避難民の子供たちを支援する現場を訪ね、先週ブカレストでも国連機関が避難民を支援する施設を訪問しました。まさに人間の尊厳が脅かされている現場を目の当たりにし、そしてこれまでの外務省勤務での経験を通じ、ここ欧州とインド太平洋の安全保障が不可分であることを痛感しました。こうしたことに対処するため、ルーマニアをはじめとする同志国との安全保障分野における連携が重要であると再認識し、国際社会の平和と繁栄のため共同声明にうたわれた安保協力を今後とも積極的に進める所存であります。
特にウクライナ情勢に関しましては、昨年日本はG7議長国として、ルーマニアを始めとした同志国と連携しながら対ロシア制裁を実施するとともに、ウクライナ、ルーマニア、モルドバ等への支援を実施しました。昨年12月、日本として今回新たに人道及び復旧・復興支援を含む10億ドル規模の追加支援を決定し、今後この追加支援と世銀融資への信用補完を合わせて総額45億ドル規模の支援を行っていく用意があります。さらに、本年2月には、シュミハリ・ウクライナ首相出席の下、日・ウクライナ両国の政府関係者、産業界等で、ウクライナの経済復興に向けた官民での連携の可能性について意見交換を行う「日ウクライナ経済復興推進会議」を東京において開催し、岸田総理からは「日本ならでは」のウクライナ支援を継続する意思を表明し、56にも及ぶ成果文書を得ました。日本はウクライナの自立的かつ持続可能な発展に向け、今後とも日本企業等と共に復旧・復興に貢献する用意があります。一方、ルーマニアは、ウクライナ避難民の受入れ、同国を経由するウクライナ産穀物輸送にコミットし、欧州F16訓練センターの開設等、ウクライナ、モルドバ及び黒海地域の安全保障環境の強化に尽力しておられ、改めて敬意を表します。日本として、是非ウクライナ情勢にかかるステークホルダーとして協調していきたいと思います。
このように益々厚みを増す日ルーマニア関係ではありますが、これらは皆様方のご理解とご協力なしにはなしえないことであり、当館としては引き続き皆様方のお力を借りながら、昨年の首脳間共同声明の実施やそのほかの分野での交流拡大に向けて努力してまいります。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
私はこのたび在ルーマニア大使として着任しました片江学巳(かたえ・たかし)でございます。このお便りで初めてご挨拶させていただく方も多いとは思いますが、皆様と日ルーマニア関係のために一緒にお仕事をさせていただくことを楽しみにしておりますので、改めまして宜しくお願いします。
私はブカレストでの勤務は初めてですが、ルーマニアは日本とは法の支配や民主主義等の基本的価値を共有するパートナーであり、また、EUやNATOの加盟国として域内での存在感も高めつつある国と伺っています。また、コロナ禍やロシアのウクライナ侵略など国際情勢が厳しい中にあっても経済が二年連続で約5%成長するという元気のいい国で、すでに自動車産業のサプライヤーやIT関連など110社以上の日系企業が進出しておりますが、近年さらに注目を浴びています。私はこうしたルーマニアとの関係の今後には大きな期待を寄せております。
日本とルーマニアは、近年その関係を深化させております。2021年には外交関係樹立100周年という節目の年を迎え、2023年3月のヨハニス大統領による訪日の際、岸田総理との間で署名された「戦略的パートナーシップ構築に関する日・ルーマニア共同声明」により、両国の関係は「戦略的パートナー」に格上げされました。これからはこの首脳間で一致した各分野での課題を一つ一つ具体的に実行に移していく段階です。在ルーマニア日本国大使館としては、着実にこれらを実行に移せるよう環境整備に努めていきたいと考えております。こうした取り組みを通じ、そして今年は日ルーマニア外交関係再開65周年の節目の年でもあるので、これを契機にルーマニアと日本の共通利益の拡大、人と人との相互理解の増進、様々な分野での交流の促進に向けて全力を尽くしていきたいと思います。
私は1月22日にヨハニス大統領に信任状を捧呈し、大使としての活動を開始して以降、まずはチウカ上院議長、チョラク首相、内務、司法、国防、経済・起業・観光、エネルギーを担当する諸大臣にご挨拶をし、戦略的パートナーとしての関係拡大深化を進めていくことで一致し、具体的な案件についても話し合いを進めました。今後もこうした話し合いをルーマニア政府要路と進めていきたいと思います。2月23日で64歳となられた天皇陛下の誕生日を祝賀するレセプションも開催し、チウカ上院議長やトゥルカン文化大臣、ブルドジャ・エネルギー大臣などのご出席を得て盛大に開催するとともに、私から大使館としての日ルーマニア関係拡大・深化へのコミットメントを表明いたしました。
政府間の関係のみならず、2023年はこうした日本とルーマニアの関係を象徴するような目に見える成果もいくつか見られました。その一つはドナウ川にかかるルーマニア国内最長、EUでも三番目の長さを誇る吊り橋「ブライラ橋」の開通であり、着任後早速訪問しましたが、その威容に圧倒されました。同橋は日系企業が有するハイレベルの橋梁技術を用いた一大プロジェクトであり、文字通り日本とルーマニアが手を携えて協力していく「架け橋」でありました。EU基金を活用したプロジェクトという意味で日EU協力の象徴でもあり、ウクライナ・モルドバ等との地域の連結性を向上させる意義もあります。今後もこうした形で日系企業がルーマニア経済に貢献できるようなWin-Winの経済関係を後押ししていきたいと思っております。特に、昨年着工した「ブカレスト国際空港アクセス鉄道建設計画」も将来両国の象徴的なプロジェクトとなると認識しています。
市民レベルでの交流についても、更に拡大する空間が大きいと考えます。私どもとしては双方の交流のスコープを更に広げ、多面的な交流拡大に努めていきたいと考えています。ルーマニアには多くの魅力的な観光資源があるにも関わらず、必ずしも日本でよく知られていないように感じております。私は2月下旬にはシビウを、3月上旬にはヤシをそれぞれ訪問し、各地域の個性をもった、歴史を感じさせる美しい街並みや建物に感動いたしました。今後とも自らルーマニア国内の各地を訪問しこの目で見て、ルーマニアの魅力を日本に伝え、多くの方々に訪問してもらうよう尽力したいと考えています。こうした人と人の交流促進は相互理解を更に進め、更なる交流を生むであろうと確信するからです。
ルーマニアの方々の日本への関心については、近年、特に文化的な面で高まってきているようです。日本語学習者も東欧諸国の中では2 番目に多いと聞いており、茶道や武道などの伝統文化、そしてアニメ・マンガといったポップカルチャーの熱心なファンがいます。これを奨励し、更に対日関心を高めるようファンの力も借りながら幅広く日本の文化を紹介していくように努めていきます。ルーマニアでは音楽や演劇に関する国際的なイベントを例年開催されており、これがそれらの分野でのアーティストや芸術を愛する市民間の交流にもつながっております。
国際社会ではポスト冷戦期が終焉し、三年目にも突入したロシアのウクライナ侵攻などにより、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序がこれまでにないあからさまな挑戦を受けており、また、人間の尊厳が脅かされる事態となっております。1月の着任早々私はガラツィで日本のNGOがウクライナ避難民の子供たちを支援する現場を訪ね、先週ブカレストでも国連機関が避難民を支援する施設を訪問しました。まさに人間の尊厳が脅かされている現場を目の当たりにし、そしてこれまでの外務省勤務での経験を通じ、ここ欧州とインド太平洋の安全保障が不可分であることを痛感しました。こうしたことに対処するため、ルーマニアをはじめとする同志国との安全保障分野における連携が重要であると再認識し、国際社会の平和と繁栄のため共同声明にうたわれた安保協力を今後とも積極的に進める所存であります。
特にウクライナ情勢に関しましては、昨年日本はG7議長国として、ルーマニアを始めとした同志国と連携しながら対ロシア制裁を実施するとともに、ウクライナ、ルーマニア、モルドバ等への支援を実施しました。昨年12月、日本として今回新たに人道及び復旧・復興支援を含む10億ドル規模の追加支援を決定し、今後この追加支援と世銀融資への信用補完を合わせて総額45億ドル規模の支援を行っていく用意があります。さらに、本年2月には、シュミハリ・ウクライナ首相出席の下、日・ウクライナ両国の政府関係者、産業界等で、ウクライナの経済復興に向けた官民での連携の可能性について意見交換を行う「日ウクライナ経済復興推進会議」を東京において開催し、岸田総理からは「日本ならでは」のウクライナ支援を継続する意思を表明し、56にも及ぶ成果文書を得ました。日本はウクライナの自立的かつ持続可能な発展に向け、今後とも日本企業等と共に復旧・復興に貢献する用意があります。一方、ルーマニアは、ウクライナ避難民の受入れ、同国を経由するウクライナ産穀物輸送にコミットし、欧州F16訓練センターの開設等、ウクライナ、モルドバ及び黒海地域の安全保障環境の強化に尽力しておられ、改めて敬意を表します。日本として、是非ウクライナ情勢にかかるステークホルダーとして協調していきたいと思います。
このように益々厚みを増す日ルーマニア関係ではありますが、これらは皆様方のご理解とご協力なしにはなしえないことであり、当館としては引き続き皆様方のお力を借りながら、昨年の首脳間共同声明の実施やそのほかの分野での交流拡大に向けて努力してまいります。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
駐ルーマニア日本国特命全権大使
