大使挨拶

令和7年11月11日

大使レター 令和7年11月

皆様、こんにちは。Bună ziua tuturor din România,

       暑い夏が過ぎたと思ったら、秋も急速に深まり、ルーマニア各地でも紅葉が美しく映える季節となりました。
さて、政治面での大きな動きとして、日本では、10月21日、日本初の女性総理として高市早苗総理が率いる新政権が誕生しダン大統領からはソーシャルメディアを通じたお祝辞を頂き有難く思っております。日本による中東欧・黒海地域への関与と支援は今後も変わらず、引き続き戦略的パートナーであるルーマニアと多方面で緊密に協力してまいります。NATOとの協力も引き続き不変です。

       また、9月28日に実施されたルーマニアにとって重要な隣国であるモルドバでは、困難な状況の中でも透明性のある公正な選挙が実施され、モルドバ国民の皆様もルーマニアの如く民主主義と欧州統合の道を力強く選択したものと理解しています。日本はモルドバの独立以来、一貫してその民主的発展と国家建設を支援してきており、今後ともモルドバの平和と安定、そして民主的発展をしっかりと支援していく所存です。10月25日には、私も後述する日ルーマニア・イノベーションフォーラムのサイトビジットとして実施された、「日・モルドバ共和国・ビジネス・フォーラム」に日本企業からなるビジネスミッションとともに参加いたしました

       10月1日、私はルーマニア日本友好議員連盟等日本との縁のあるルーマニア議会関係者を招待して公邸でレセプションを主催しました。友好議員連盟の新旧メンバーに加え、最近日本を訪問された複数の議員の方々にもご出席いただきました。2023年に二国間関係を戦略的パートナーシップへと格上げして以降、両国議員間では活発な往来が行われており、同議員連盟等の皆様の長年のご支援に感謝をお伝えする機会となりました。

       10月17日には、自衛隊創設71周年を祝うレセプションを開催しました。プスラル投資・欧州事業相やイヤコブ参謀副総長などに祝辞をいただくと同時に、日本式の祝賀行事「鏡開き」を行いました。この鏡開きは、日本では『新しい門出を祝う』という意味を持ち、今後の自衛隊の活躍、ルーマニアとの防衛協力の進展を祈念しました。会場では国防省音楽隊による壮麗な演奏が響き渡り、その力強さと美しさに心を打たれました。今回は初の試みとして、今後の防衛産業面等での連携も念頭にスズキ自動車、三菱電機、富士通FSASの3社による関連企業展示も行われました。

       ウクライナ情勢については、10月22~23日に日本が「ウクライナ地雷対策会議2025」(Ukraine Mine Action Conference UMAC2025、この部分の英語は括弧内は掲載時和文文面から削除)をホストし、ルーマニアからはラエツキ駐日ルーマニア大使にご出席いただき、ルーマニアを含む多くの国々から支持をいただきましたhttps://www.mofa.go.jp/press/release/pressite_000001_01754.html。次回会議は2026年にEUが主催する予定ですが、日本としては引き続き地雷対策の面も含めウクライナ側に立って、ウクライナの人々に公正かつ永続的な平和が訪れるよう様々な支援を続けていきます。その観点からは7月22日、日本の資金提供に基づく、ルーマニア・ウクライナ国境付近におけるポリオウィルス等感染症対策のための廃水サーベイランスを強化する共同プロジェクト実施についてWHOルーマニア事務所及びルーマニア国立公衆衛生研究所の間で署名式が行われ、私もその場に立会いました

       文化交流面では、9月9日にはグリゴレ・アンティパ国立自然史博物館で「日本の自然写真展(Japan - Tales of Nature)」が開幕し、12月7日まで開催中です。日本というと「自然」というイメージがない方々も多いかと思いますが、ぜひこの機会に、南北に長く延びる日本列島の国立公園を中心とする自然・四季の美しさを感じ、環境保護や生物多様性の保全に努める日本の別の側面を見ていただければ幸いです。日本に関連する展覧会としては9月5日から10月12日の間、国際交流基金の巡回展「現代日本デザイン100選」がブカレストのアートサファリで開催されました。同4日には、同時開催された他の展覧会と併せてデメテル文化相の出席も得て開幕式がとり行われました。
また、9月12~14日、ルーマニア最大のポップカルチャーイベント「East European Comic Con」が開催され、大使館としてもアニメにかかるクイズコーナーを設け、私も若者になったつもりで参加し、多くの若者たちと写真をとったり、交流したりしました。とても楽しいひとときを過ごしながら、日本のポップカルチャーがルーマニアで広く受け入れられていることを実感しました。

       スポーツ面での交流も忘れてはなりません。日本では国民の間で最もポピュラーなスポーツと言えば野球です。7月27日、私はご招待を受けて、カララシ市で行われた「ルーマニア・ベースボール・カップ」の始球式に参加し、同市副市長とともに祝辞を述べた後、開幕のための一投をしました。ルーマニアでは野球はまだ人気スポーツとは言えませんが、野球を通じた日ルーマニア間の交流が進むことを期待しております。ところで、野球に似たルーマニアのスポーツにオイナというのがあるのを知り、偶然にも9月26日にはオイナ連盟の招待を受け、ルーマニアとモルドバ共和国の国際試合を観戦しました。試合後には、オイナの球を試し打ちさせてもらうなど大変楽しい経験でした。

       10月10日には、当館とブカレスト大学の共催で、国際基督教大学名誉教授のツベタナ・クリステワ先生を招いた特別講演「源氏物語の光と影」を開催いたしました。日本語を学ぶ学生や日本語の専門家だけでなく、日本の古典文化に関心のある方々など約70名 が参加した講演は、ブカレスト大学で日本語教育が始まって50周年を記念して開催したものです。ルーマニアの日本研究の更なる発展のきっかけになれば幸いです。

       さて、経済面では、9月11日に三菱UFJ銀行、SMBC BANK EU AG、EY ROMANIA及び海外投融資情報財団の共催で東京とオンラインのハイブリッドで、「欧州における注目の進出先、ルーマニア」セミナーが開催され、オンラインで登壇し、ルーマニアの投資先としての注目点を指摘しました。また、10月8日には当地スタートアップ・スケールアップ企業を支援するInnovX社主催によるMoonshotX Galaに出席し、InnovX社は2025-2026年のテーマ国を日本とすることを歓迎する旨挨拶しました。21社のルーマニアのスタートアップ・スケールアップ企業が2026年に訪日する予定です。両国の経済関係が様々なレベルでますます拡大・深化していることを嬉しく思います。

       4月に開幕した大阪・関西万博は10月に閉幕し、累計約2900万人が来場頂きました。ルーマニア館へは約100万人が来訪したと伺っており、心からお祝い申し上げます。6月26日のナショナルデーではアブルデアン上院議長らが訪日後も、クルージュ市の経済ミッションや国立オペラ、マドリガル合唱団やシビウのラドゥ・スタンカ劇場などが訪問し、経済・文化交流がさらに活発化しました。今後もこの成果を基盤に、両国の経済関係を一層強化してまいります。また、大阪・関西万博の後は、2027年3月から9月にかけて、神奈川県横浜市で国際園芸博覧会が開催されます。2年前に我が国の戦略的パートナーとなったルーマニアは園芸分野でも様々な取り組みを行っていると承知しており、我が国で開催される園芸博に初めて参加頂ければ大変意義のあることと考えます。

       9月26日、昨年ブカレストで開催された第1回に引き続き「第2回日ルーマニア・エネルギーフォーラム」が東京で開催され、ルーマニアからはブショイ・エネルギー省次官やエネルギー関係企業に参加頂き、エネルギー分野でのビジネス連携の強化に向けた意見交換、情報交換、ビジネスマッチングなどが行われました。10月23、24日には、当館が経済・デジタル化・起業・観光省、ヤシ市などと共催で第3回「日・ルーマニア・イノベーション・フォーラム」を同市で開催しました。2日目の開幕式にはコテツ上院副議長やミルツァ経済・デジタル化・起業・観光大臣の出席も得て、日本から約30社と5政府系機関が参加し、物流・ヘルスケア・農業など幅広い分野で活発な意見交換が行われました。先述のように、25日には、これらの日系企業代表団とともにモルドバも訪問し、日ルーマニア・モルドバでのビジネス連携も念頭に意見交換をすることができました。24日に行われたアレクサンドル・ヨアン・クザ大学及びジョルジェ・エネスク芸術大学創立165周年記念式典では、ダン大統領に対してこのフォーラムの成果を直接お話をする機会を得ました。なお、同日同大学にて日本文化センターが開設され、私もオープニングで祝辞を述べ、日ルーマニア交流の新たな拠点としての役割への期待を述べたところです。

       最後に私自身も引き続き日ルーマニア関係の一層の深化のため皆様方の理解と協力を得ながら取り組んでいきたいと思いますが、10月1日、コトロチェニ宮殿でミラベラ・グラディナル大統領パートナー主催の下開催された、乳がんへの取り組みを啓発するイベント第25回「Pink Illumination」には私の妻が参加しました。日本政府としても乳がんの正しい知識の普及と早期発見・早期診断・早期治療の重要性を啓発する活動を含め、女性の健康促進を支援しており、大統領府のこの取り組みに深い敬意を表します。

       寒さが増す季節、どうぞお体にお気をつけてお過ごしください。次号でまたお会いできることを楽しみにしております。


 
駐ルーマニア日本国特命全権大使
片江 学巳


 
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